日常と創作はいつだって隣り合わせ
ひとつの曲が生まれるまでを追った ユーモラスで愛おしいドキュメンタリー
仲間たちと集まって一緒にものをつくる楽しさ。小さな部屋で遊びから始めた行為がいつの間にか作品になって、やがて大きな場所へ広がってゆく、かもしれない……。そんな自分たちの日常と地続きの創作。楽器の技術さえ必要ないヒップホップという音楽は、その実感をつねにわたしたちに届けてくれる。
注目のヒップホップ・アーティストOMSBとBim、そして仲間たちも加えた、真剣だけどコメディ映画みたいににぎやかな音楽づくり。『THE COCKPIT』はそれを記録することで、同じようにわたしたちの日常と創作とを繋いでみせる。刺激的な創造行為の貴重な記録であると同時に、若者たちのユーモラスで愛おしい日常の記録でもある、これはそんなドキュメンタリー。
「なんか楽器習ってました?」「いや、なんにも」
日本中どこにでもある小さなマンションの一室。テーブルの上には、いくつものパッドが並ぶサンプラー。その横にキーボードとターンテーブル。普段の生活の延長のようにイスに座り、まずはレコードを選ぶOMSB。お気に入りの音たちをサンプリングし、独特のリズムでパッドを叩きながら、理想のトラックを探っていく。BimはOMSBの作業を見ながらからだを揺らしてみたり、ときには新たなアイデアを出してみたり。やがて夜がふけ、朝になり、今度はふたりで一緒にリリックを書き始めていく。
ヒップホップと映画の“リアル”
監督は初の劇場公開作『Playback』(村上淳主演)が各方面で話題を呼んだ三宅唱。これまでとは別の映画づくりを模索するなかで、ヒップホップの音楽作りに刺激とヒントを求めて、今回の企画はスタートした。
いまやさまざまなジャンルに影響を及ぼすジャパニーズヒップホップのなかでも、ひときわ異彩を放つクルー「SIMI LAB」。そのMC/トラックメイカーであり、ソロとしても活躍するOMSB。そして彼と同じレーベルSUMMITに所属し、音楽シーンのみならずファッションシーンでも注目を集める「THE OTOGIBANASHI'S」のBim。クルーは違えど互いをリスペクトしあうふたりに、三宅唱が曲の共同制作を依頼し、二日間のその過程を記録。本作のなかでしか聴けない曲「Curve Death Match」が完成した。